「いきなり雨降るなんて反則だよぉ……服もビショビショになっちゃった」
パタパタと小走りに玄関からリビングへ急ぎ、千鶴は荷物をテーブルに置く。
まさかの驟雨に降られてしまって買い物袋も自分もずぶ濡れだ。
買い物は済んだから良いものの、ポタポタと水滴が床を濡らす。
「タオル、タオル……!」
片付けもそこそこにしてバスルームへと駆け込む。
ふかふかのタオルを片手に千鶴は髪を解いて水分の含んだ髪を拭く。
一瞬の集中豪雨ともいえよう驟雨は短期集中型のようだった。
全身濡れ鼠になった千鶴は必死になって髪を拭くが、衣服の濡れようも半端ない。
「うぅぅ……ベタベタ気持ち悪い」
張り付いて躯に与える不快感に耐え切れず衣服を脱ぐ。
少々はしたないが今の時間は千鶴一人だ。
脱いだ衣類を洗濯機に入れて躯を拭いてから自室に着替えに行こうと考えた。
「と、取れない。んも~……きつい!」
下着姿になったは良いが千鶴は悪戦死闘を強いられることになった。
雨で水気を大いに含んだブラジャーがアンダーバストを酷く締め付けているのだ。
外そうと試みるが前日下ろしたてのそれは中々外れない。
いつものものならば手慣れているのだが新品はどうも扱いづらい。
早く外して楽になりたいのに、じれったさだけが募る。
「外れないぃいい…!」、とブラジャーに手を掛けて苦戦していると予想外の声が聞こえてきた。
「なんだ、帰っていたのか?」
「――っ!!?」
「お前も外の雨にやられたようだな」
「かっ、かっ…かざま、せんッ……!?!」
「何だ、外せないのか?」
驚愕して動揺する千鶴を余所に風間は平然としていた。
湯気と共に滴り落ちる水滴すら艶やかに感じてしまうのは風間の美貌ゆえだろうか。
何処までも思考回路が一般人とは違う彼は自然に千鶴に近付き“プチッ”と彼(か)のものを外した。
それまで呆然としていた千鶴は我に返り、顔を真っ赤にして胸元を隠す。
「これで良いのだろう?」
「~~~~……ッッ!!」
声にならない叫びをあげて千鶴は逃走した。
もちろん場所は彼女に与えた部屋だが。
残された風間は“はて、自分は何か間違ったことをしただろうか”と首を傾げる。
その後、千鶴は数時間に渡って天の岩戸を行い、数日間は碌に風間と視線を合わせず無言を貫いたそうである。
<了>
【後書】
にわか雨に降られたのも、ブラのホックが外れなかったのも曼珠です。
ま、こんな話みたいに素敵な男に外してもらったわけではありませんが。笑
自力で格闘しましたよ…!でも、そういう体験をしながら生まれた話です。
ちー様ならナチュラルにやりそうじゃないですか、ほら。←
天岩戸やってる理由が皆目見当つかないバカ具合も愛しい限りです( *´艸`)
自分では親切にやってあげたつもり。乙女心は複雑なのですよ、ちー様。
後日談は今度アップしまするー。
宜しければ『千紫万紅』やこの話のご感想をどうぞ。
またお気軽にリクもどうぞヽ(*´∀`*)ノ

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